お尻や脚の痛みは仙腸関節障害かも?

仙腸関節炎とは?

仙腸関節(骨盤模型)
仙腸関節(骨盤模型)

 仙腸関節に偏った負荷が繰り返しかかったり、日常生活の何気ない動作により、仙腸関節にずれが生じてロックしてしまい、仙腸関節の滑らかな関節の動きが出来なくなることを、仙腸関節障害といいます。さらに、このように仙腸関節がロックしている状態で無理な負荷がかかると、仙腸関節の癒着を強引に引き剝がすことになってしまい、炎症を起こしてしまうことがあります。これを仙腸関節炎といいます。これは、部屋の壁紙に貼ってあるポスターを一気に剥がすことで、壁紙が破れてしまうのに似ています。

仙腸関節炎の症状

上後腸骨棘と仙結節靭帯
上後腸骨棘と仙結節靭帯

 仙腸関節炎の症状としては、お尻、鼠径部、股関節部、腰部、骨盤沿いのすぐ上側、下肢の痛みやしびれが挙げられます。お尻の中でも、上後腸骨棘(骨盤後方のポコっと出っ張った部分)近辺や仙結節靭帯(仙骨と坐骨をつなぐ靭帯)付近に痛みが好発し、これらを圧迫すると痛みが出ます。また鼠径部、股関節周辺に痛みを訴える方も多いです。また下肢の中でも、太もも裏の外側に痛みを訴える方が多いです。これらの痛みは、仙腸関節炎の起こっている片側に出ることが特徴です。また痛みの位置は比較的はっきりしており、ここが痛いですと指差すことが出来ることも特徴です。

 これらの痛みやしびれは、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアと似ているため、間違えられることがしばしばあります。しかしながら、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアでは、神経の走行ルートに沿って痛みが発生するのに対し、仙腸関節炎が原因の痛みは、神経の走行ルートとの因果関係はありません。レントゲンやMRIなどの画像検査で異常が見つかると、痛みの原因はこれであると関連付けたくなるものですが、最近では必ずしもそうではないということがわかってきました。

 その他、仙腸関節炎の症状としては、下記のような特徴があります。

  • 仰向けに寝ることができない。
  • 痛い方を下にして寝ることができない。
  • 寝返りするときに痛みが出る。
  • 長時間椅子に座っていると痛みが増悪する。
  • 正座は問題なくできる。
  • 椅子から立ち上がるときに痛みが出る。
  • 動き始めに痛みが出る。
  • 靴下を履く動作のように、前かがみになると痛みが出る。
  • 側屈、後屈、回旋運動でも痛みが出る。
  • 重度のケースでは、長時間歩くことができない。
  • 出産後に痛みが増悪した。

仙腸関節炎の施術

 仙腸関節炎の施術法としては、骨盤調整をメインとして、その他に全身の骨格調整と指圧を行います。施術期間の大まかな目安としては、軽度の場合は1~5回、重度の場合は週1~2回ペースで1~数か月程度です。たいていは5回以内で症状が引くことが多いです。当然症状が出始めてから早い段階で施術を受けていただいた方が、回復にかかる時間は少なくて済みます。逆に最初に症状が出始めた頃から何年も経過している場合は、回復にかかる時間は長くなる傾向があります。また仙腸関節炎の症状が強い場合も、回復にかかる時間は長くなる傾向があります。また一旦仙腸関節炎になってしまうと、原因である仙腸関節のロックを解除したとしても、急に炎症が収まることはなく、炎症が収まるまでにはある程度の期間が必要です。

 施術頻度としましては、最初の頃はなるべく施術間隔を詰めていただき、様子をみながら徐々に間隔を空けていただくことをお勧めします。ロケットが重力に逆らって大気圏を脱出するまでに大きなエネルギーを必要とするように、最初の頃は集中して施術を受けていただくことをお勧めします。

 仙腸関節炎の施術におきまして、一般的に「仙腸関節のロックを外す」ということを最終目的とされていることが多いのではないかと思います。私自身も過去に急性の仙腸関節炎になった時に、指導員の方の施術を受けたことがあるのですが、仙腸関節のロックを外す=仙腸関節の引っ掛かりを解除してあげる ということなので、骨盤全体の3次元的な歪みの改善までには至らないという印象でした。それだと確かに仙腸関節炎は治るものの、骨盤の歪みの改善があまりされないため、私がとても苦しんでいて改善してほしいと望んでいた背骨の歪みに由来する全身症状の改善に関しては、ほとんど進まなかったという結果になりました。そのため私は、仙腸関節のロックを外すという段階からもう一段進んだ、骨盤全体の3次元的な歪みを改善するという点にこだわり、現在の骨盤調整の形に至りました。骨盤調整に関する詳しい説明は下記をご覧ください。